【積立投資の説明でよくある間違い1】「平均買付単価が下がる」という説明

【よくある間違い1】「平均買付単価が下がる」という説明

積立投資の説明でよくある3つの間違いを順番に解説します。

今回は、1つ目「平均買付単価が下がる」という説明です。これが最も多い間違いです。

具体的には、ジグザグしたグラフを表示して、「価格が下がった時に多くの量を買い、上がったら少ない量しか買わないので、平均買付単価が下がる(安くなる/低くなる等)」という説明です。

この説明を3つのステップに分類します。

  • STEP1:値下がり時に多くの「量」を買える
  • STEP2:値上がり時に少ない「量」しか買わない
  • STEP3:よって「平均買付単価」が下がる

STEP1、STEP2は正しいです。

たしかに、積立投資で定期的に購入していくと、商品の価格が下がった時に多くの「量」を買い、価格が上がった時には少ない「量」しか買えません。

しかし、STEP3が間違っています。

平均買付単価が上がるか下がるかは、値動き次第だからです。

「平均買付単価」が上がるか下がるかは値動き次第

上の図をご覧ください。

これは、10,000円からスタートして、2年ごとに4,000円の上下を20年間繰り返している架空の商品の値動きです。

AとBは上下対称の値動きです。

この商品に、積立投資をするとどうなるでしょうか?

Aのケース(下にジグザグ)では「平均買付単価」は下がります。

価格が下がっている時間が長いため、価格が安いところで量を買っているからです。

しかしBのケース(上にジグザグ)では、「平均買付単価」は上がります。

価格が上がっている時間が長いので、価格が高いところで量を買っているからです。

つまり、積立投資の平均買付単価が上がるか下がるかは、値動きによって決まるのです。

価格が上がっていく商品なら、平均買付単価は上がります。

価格が下がる商品なら、平均買付単価は下がります。

値動き次第で決まるのであって、平均買付単価が下がりやすい訳ではありません。

成長資産への積立投資は基本的に「平均買付単価」が上昇する

昨今、積立投資は老後の資産の備えなどの目的で、株式などの中長期的に成長が期待できる資産に投資をする方法として説明されるのが一般的です。

 その場合、投資する資産は、短期的な上下を繰り返ししつつも、中長期的に上昇することが前提になっていることがほとんどです。

中長期的に上昇(値上がり)するものに積立投資をしていけば、平均買付単価は当然上がります。

野菜でも洋服でも、値上がりするものを継続的に購入すれば、平均購入価格は上昇するのは自明です。

アメリカ株式に積立した場合

これは1900年以降の米国株の推移です。米国株は、1900年初から2015年末までに約264倍も上昇しています。

米国株式に、中長期的に積立投資をした場合、平均買付単価は下がるでしょうか?

大抵のケースで上がるのは誰の目にも明らかでしょう。

過去の証券市場で積立投資をした場合は、基本的に平均買付単価が上昇した

私は過去、膨大な積立投資の検証を行いました。

日本や欧米、新興国の株式市場、債券市場、リートなど様々な資産を組み合わせて、中長期的に積立投資をする検証を行いました。

具体的な検証例としては、拙書「積立投資のすべて」(パンローリング)の第7章をご覧ください。

様々なポートフォリオで一括投資と積立投資を同じ値動きを用いて、それぞれ16,830回検証した結果が紹介されてます。

結果は、多くのケースで一括投資に比べて、積立投資の利益は約半減しました。

理由は、積立投資の平均買付単価が上がったからです。

過去の証券市場(株式、債券、リートなど)は、基本的に中長期的に上昇しました。

価格が上昇するものを定期的に買えば、「平均買付単価」は上がるのは当然です。

もちろん、今後についてはわかりません。

ただ、中長期的に価格の上昇が期待できる資産(商品)を前提にして、「平均買付単価」を用いて説明するなら、「平均買付単価は上昇しやすい」と伝えるのが顧客本位の説明です。

しかし、それでは積立投資の特徴は何も伝わりません

そもそも積立投資の説明で、平均買付単価は不要なのです。

(平均買付単価については、売却時の税金の計算に用いる程度で十分です。ただし、それは運用を始めた後の話なので、スタート時に平均買付単価の説明は一切不要です。)

92%の金融機関が「平均買付単価」が下がると説明している

しかし、積立投資を説明している92%の金融機関がこんな初歩的な間違いをしているのです。

また、はじめにでも紹介した通り、証券業協会・投資信託協会・金融庁も同じ様に「平均買付単価が下がる」と解説しています。

この現状から明らかな通り、これまでの金融業界は積立投資を真剣に考えてこなかったのです。

「平均買付単価が下がる」が定着している状況については、こちらから無料E-bookをダウンロードして確認してみてください。

よくある「一定口数」購入した場合の比較などの解説は、他の記事で解説します。その場合でも、平均買付単価が下がるではなく、上昇幅が抑えられるが正しい表現です。プロとして正しく説明したい方は、ドルコスト平均法検定を受験してください。

「平均買付単価が下がる」という間違った説明の副作用について

この「下がった時に多くの量を買い、上がった時に少ない量しか買わないため、平均買付単価が下がる」という説明のデメリットは、単純に積立投資の特徴が理解出来ないだけではありません。

その弊害は、さらに広がります。

【弊害】 取り崩し方法の間違った説明

それは、資産運用の取り崩し方法(出口戦略)です。

人生100年時代を迎え、将来の取り崩しについても注目が集まっています。

退職後の長いセカンドライフで、運用しながらもお金を使う方法に関心が高まっています。

取り崩しについて、定率解約が望ましいという意見を良く聞きます。

具体的には次の通りです。

「定額ずつ解約すると、積立投資の逆になる。つまり、価格が上がったときは少ない量しか解約しないが、価格が下がったところで多くの量を解約してしまう。積立投資の場合は、安い時に多く買うので良いが、解約の時に値下がり時に多くの量を解約してしまうのは良くない。それゆえ、定率解約が望ましい」という説明です。

しかし、この説明は前提となる積立投資の説明が間違っています。

それゆえ、この「定率解約が良い」という説明も間違っています。

基本的には、老後の取り崩しで定率と定額を比較すれば、一般の方には定額解約が望ましいです。

なぜなら、値動きが一定の場合、定率解約は最初の解約額が最も多く、徐々に低くなっていく傾向にあるからです。

老後の資産運用では、なるべく資産を残そうという意図が働く人が多いでしょう。

そういう人に定率の取り崩しは不向きです。

定額解約、定量解約、定率解約のメリット・デメリットについても本サイトで解説していきます。

積立投資の応用版として一部の人の間で知られているバリュー平均法についても、前提となる積立投資の理解が間違っているので、色々変な議論になっています。詳しくは別の機会に解説します。

「平均買付単価」の説明は積立投資の誤解を与え、一切の特徴を説明できず、取り崩しなども誤解を与えてしまう「百害あって一利なし」なのです。

積立投資を周りの人に教えてあげて、認知度を高めよう!

これからの日本人には、自助努力による資産形成が不可欠です。

積立投資は、欧米では一般的な資産形成の王道と呼べる手法です。

しかし、日本では金融業界が本気で推進してこなかった事もあり、まだまだ知らない人が圧倒的に多いです。

また、投資=ギャンブル・博打と誤解している人も大勢います。

皆さんのお友達や同僚、ご家族の方に積立投資を教えてあげましょう!

そして、将来お金で困る人を1人でも減らす為に、正しい積立投資の知識を共有して、ドルコスト社会を実現しましょう!